映画レビュー:JOKER
【男は笑いながら狂気の階段を踊り落ちていく】
【自己採点】80点(100点中)
●色々なジョーカー
映画『JOKER』の上映が発表された時に感じたことは大いなる興味と心配でした。
全てのバットマンシリーズを網羅しているわけではありませんが、小さい頃にテレビでやっていたアニメ版バットマンに出てくるジョーカー、ジャック・ニコルソン演じる映画版『バットマン』のジョーカー、アメリカで手にしたコミックに登場するジョーカー、そして映画『ダークナイトシリーズ』に登場するヒース・レジャー演じるジョーカー。
色々な人によって解釈や描き方が違うJOKERの存在と人物像。
でもこれだけは言わせてください。
それほどJOKERという存在は、世界で一番というほど知られ、愛された悪役キャラクターだと思います。
そんなジョーカーがこの映画では主人公としてスポットライトが当てられています。
それまではバットマンというヒーロー像に相反して描かれたジョーカー像ですが、主人公というだけあって、メイク前の素顔が出ている!
「ここまでやるからには絶対に名作でなくては困る!」そんな事を上映前に思ったりしていましたw
●想像を打ち破った作品
この映画では予告の通り、ある純粋な男が社会の中で様々な恵まれない境遇にあった結果、狂気の道へ進み続け、とうとうあのジョーカーになってしまうという話になっています。
しかしこの映画は単に他のヒーロー映画のスピンオフではないんです。ただ“ジョーカーが誕生しました”という話だけでは終わらないのがこの映画の重要なポイントです。
ここからは【ネタバレ】になってしまいますが、
この映画に登場するジョーカーとジョーカーになるまでの流れは、
実は主人公の想像上の話でした。
当の主人公(アーサー)は精神病院に入院(勾留?)していて、カウンセラーと話しながら自分がジョーカーへと変貌する姿を想像します。
ジョーカーという存在が主体ではなく、あくまでもジョーカーという存在を頭の中で生み出す精神を持った男がこの作品の主体である。
非常に説明が難しいですが、そこがこの作品で一番大事にしているところなのではないのかなと思います。
ジョーカーの映画であってジョーカーの映画ではなくてアーサーの映画である。
そんな感じでしょうか。
●迫真の演技に圧倒
そしてなによりもアーサー(ジョーカー)役を演じたホアキン・フェニックスに圧倒されてしまいました。
沢山劇中で苦しみや怒りや悲しさに笑いをあげるアーサーを迫真と言うまでに演じきったホアキン・フェニックスには、そのストイックさも相まって正直ひいてしまうほどの衝撃を受けました。
●人々は何に共感したのか?
この映画は上映開始直後から観た人の間でした様々な論争を巻き起こしました。
大まかには(彼の想像上の話ですが)ジョーカーに変貌するアーサーに共感するもの、しないもの。
私はどちらかというと共感してしまいました🤔
社会で暮らす中で存在する目には見えない階級という名の壁。アメリカでは“ガラスの天井”と言われるものですが、日本ではちょうどこの頃ある悲しい事件で“上級国民”という言葉がもてはやされました。
“人は平等ではなく、ごく限られた人のみが恵まれている”
どうしようもなく絶望するしかない社会の構造とそれに見て見ぬフリをしながら上部だけの綺麗事を吐き続けるお偉いさん方。
そんないくあてもない苦しみをジョーカーは笑いにかえて社会を未曾有の混乱に引きずり込もうとしました。
この映画を観て共感を持った人はきっと心の中にやり場のない悲しみや怒りを持っているのでしょう。
●個人的な感想
この映画はこれはこれで楽しめたんですが、やっぱり僕の大好きなバットマンに出てくるジョーカーを比べてしまいます。
そう考えると一番好きなジョーカー像はダークナイトでヒース・レジャーが演じたジョーカーです。
アーサーのジョーカーはネガティブな要素から生まれたジョーカーに対して、ダークナイトのジョーカーは正に純粋悪。
ポジティブな悪ってなんか表現おかしいですがwそこに僕の個人的な好き嫌いがでてしまいました。
でもこの映画は初めてジョーカーをツールとして使用した斬新な映画だと思います。
楽しめたのは事実です👍