映画レビュー:ブラック・クランズマン
【憎悪が渦巻いた70年代の回帰】
【Amazon primeレビュー】
Amazon prime評価:星3.9
【自己採点】74点(100点中)
●久しぶりに観たスパイク・リーの映画
アメリカの大学に在籍していたら頃には、Black Cultureを学ぶ為の学科があり、何度か授業に参加した事がありますが、そこでスパイク・リーの『School Daze』という映画をみんなで鑑賞して背景や映画の意味などを議論するという日がありました。
日本で育った僕にとってはそのBlack Cultureを語る上で、登場するキャラクターの髪型や喋り方、背景の音楽など全然予備知識が無くてちんぷんかんぷんでしたが、全く知らない世界の話を周りの生徒や先生から聞けてすごく新鮮でした。
そんな事で、僕はスパイク・リーの全ての作品を網羅しているわけではありませんが、
この授業がきっかけで、スパイク・リーは彼自身がアフリカ系アメリカ人でもある事から、彼の視点から黒人社会(特に文化的な部分)の雰囲気、そしてアメリカ社会全体で扱われているリアルな反応を、ポップだけど真摯に伝える事をモットーにしている監督だなというイメージがありました。
●映画のストーリー
映画のストーリーとしてはアメリカのコロラドスプリングという街で、70年代に初めて警察官になった黒人の主人公ロン・ストールワースが、ユダヤ人で警察官のフィリップ・ジマーマンと協力し、KKK(クー・クラックス・クラン)という白人至上主義組織に潜入し、恐るべき破壊行動を阻止するという話になっています。
しかもこれは実話を基にしたストーリーなんです!
●映画の伝えたい事
もちろんこの映画では実際にあったストーリーを伝えていて、しかも当時強く迫害されていた黒人の警官(とユダヤ人の警官)が白人至上主義で差別主義の団体の鼻を明かした話は、スパイク・リーを含めたアフリカ系アメリカ人にとって英雄的な物語に感じられたはずです。
でもそれだけではなくて、この映画ではKKKに属する人間の異常な感情を取り上げていて、さらにはこうした差別的な時代の風潮と今のトランプ政権下の社会状況とを比べさせようとしています。
“当時の状況は今の時代の状況と非常に酷似している。”
なので映画の終わりにはここ最近実際に撮影された白人至上主義者の集まりによる運動の様子、それに反対するデモの様子、そして実際に起きた最近の痛ましいヘイト・クライム(差別といった憎悪が原因での犯行)が紹介されています。
一部取り上げた事件は日本のニュースやSNSでも見聞きした内容も入っていましたが、映画だけあってもうちょっと突っ込んだ痛ましい映像も含まれているので観る方は注意が必要です。
●繋がりの悪さ
スパイク・リーが伝えたい事はすごくわかりましたし、僕個人としても白人至上主義や差別主義には異議を唱えますが、映画としては流れや構成の悪さが目立ちました。
特に最後に実際の映像を流すなら、もうちょっと本編の映像というか撮り方をリアルに寄せてもよかったんじゃないかなと思いました。
そして本編の運びが間延びしていたり、そのわりには登場人物の背景をもうちょっと掘り下げるとかして欲しかったなと思いました。
個人的には非常に大切なメッセージがあったのに、もったいなかったなと思える作品でした。