映画レビュー:1917
【ある兵士による、命をかけた、“2つ”の命の伝令】
【個人採点】82点(100点中)
●宣伝に騙されるな!
映画『1917』のパンフレットから引用【まず、誤解のないように言っておくと、本作はワンカットで撮影されたわけではない。だが、それぞれのシーンはすべてワンカットで撮影され、全体が継ぎ目なくつながり、まるで1つの長回しのシーンのように見えるのだ(1919パンフレット,PRODUCTION NOTES,撮影について)】
じゃああの宣伝はなんだったのか!
それ強調されたら観た時困惑するやろ!!
それだったら“全編ワンカット”なんか謳わずにそう言って欲しかった!
正直“全編ワンカット”って聞いた時に、“その必要あるか??”て思いました。
●ワンカットについて
とはいっても“各シーンの長回し”は本当に長い回しでしたw
それはそれで新鮮でしたが、途中からそればっかりを気にしてたらストーリーや各シーンの意味するところ見失うなと思って意識するのやめました。
すごく入念にリハーサルをしたそうですし、長回しの分、カメラが動けばそれだけ背景に色々な情報が映り込むのでエキストラやセットの作り込みはすごく気をつけたんではないかなと思います。
パンフレットでも読みましたが、時には台詞のタイミングや登場人物達の距離の寸法に合わせて廃墟やトレンチ(塹壕)の形を調整したそうです。
●ストーリー
時は第一次世界大戦、戦線最前線でドイツ軍の仕掛けた罠の網に、そうとは知らずに突入しようとしている部隊を助ける為、突入中止の伝令を届けるという物語。もし突入が阻止できなければ1600人の命が犠牲になるという責任感と、伝令を届ける為にはドイツ軍の残党が潜むエリアを超えなければならないという危険性に立ち向かう2人の兵(ウィルとブレイク)
●長回しの効果
監督が長回しにこだわった理由としては、映画の臨場感と、伝令を戦前に運ぶための猶予がない差し迫った空気感を伝えるためだったと思いまず。さらに長回しの分、敵兵がいそうなエリアに入ればいつ現れるかわからない切羽詰まった空気にすごくプレッシャーを感じますし、急に銃弾が1つ飛んでくるだけで飛び跳ねるくらいびっくりしました。
●2つの伝令、2つの大義
ここからはストーリーについてですが、最終的に伝令を届ける事ができたのはウィルだけでした。
壮絶な危機を乗り越えたウィル。なぜ彼は最後まで諦めなかったのか。
それは兵士として味方の兵士(兵力)を救う為、そしてウィルとして仲間のブレイクの言葉を伝える為の2つの大義を彼が持っていたからです。
そう、ウィルが最前線まで持っていった伝令は将軍が書いた中止の命が書かれた書簡だけではなかったのです。
両方の伝令を届ける事ができたウィルはそれぞれ異なる反応を返されます。
その返された反応の違いも注目するポイントです。
●戦争は続くよどこまでも
舞台は1917年で、まだまだそこから1年以上は続く戦争になるとは、そこに登場する人たちは知る由もないでしょうが、観る人にとってはこのストーリー上で沢山の命が救われても、それはひとときでまた多くの命が失われてしまう事を心の奥で感じています。
この映画の伝えたいテーマ的なものは明確にはわかりませんが、その連続する悲劇の中で起きたある兵士の物語をしっかりと描いたと思います。
ちなみにこの物語はサム・メンデス監督が、自身の祖父から伝え聞いた戦争での出来事を参考にしたそうです。
ワンシーンとか撮影方法に気を取られてしまうとストーリーでの意図が見えづらくなってきまいますが、あまり意識せずに展開を観ていただければ楽しめる映画だと思います。
ちょっと最後のウィル1人だけのシーンはあんまりこう、伏線とかあったけど、うーーん…て感じでした。